医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2022年5月16日

(450)高齢者の窓口負担大幅アップ大丈夫?

 新型コロナのおかげで会見や会議の多くが中止になり、一部がオンライン会議になっています。そんな状況の 4月末、珍しく従来型の記者会見がありました。正面席には数人の役員が並び、こちら側記者席には…時が時だけにやはり数人というさびしさでした。でも私が昔から信頼している団体でしたから、何となく明るい気持ちになりました。
 全国保険医団体連合会 (保団連) は約10万人の開業医師・歯科医師が加入している大きな団体です。私は、1984年に発表された弁護士グループの「患者の権利宣言」を支援していましたが、 4年もの議論を経て医師側から対応してくれたのが1989年保団連の「開業医宣言」でした。患者との対話、医療機関の連携、地域医療の重視など、患者のための医療宣言に感激したことを今も思い出します。
 住江憲勇会長が今回訴えたのは窓口負担増加問題でした。75歳以上の後期高齢者医療の窓口負担 (自己負担分) は、現在は大部分が 1割負担ですが、今年10月から一定以上所得のある人は 2倍の 2割負担になります。医療費増加には税金や現役世代の保険料よりは窓口負担で対応します。約 2割の高齢者が該当するようです。
 値上げとあって政府は積極的に知らせず、メディアも大きくは取り上げていないため、知らない人も多いはずです。住江会長によると、アンケートでは窓口負担増で約 3割が「受診を控える」と回答しており、新型コロナの影響も加わり、必要な医療も受けず重症化する患者が増える心配もあります。背景には、企業の法人税を軽減し、消費税を増やしている政策や、企業は収益増なのに日本の労働者の賃金は増えず、貧困や格差の拡大があると住江会長は指摘しています。保団連は街頭での反対署名運動なども行っています。
 窓口負担が 2倍になって驚く患者が目に見えるようですが、対象は限られた人たちですし、しかも従順な国民ですから結局は政府の狙い通りに落ちつくのでしょう。願わくば不要、過剰な医療の受診から減って欲しいものですが。

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