田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(444)介護人員減らすより増やすべきでは
介護施設の人員配置の基準「入居者 3人に職員 1人」が「 4人に 1人」などと緩められそうとの報道( 3月19日付け『朝日新聞』) に目が止まりました。昨年から何度か政府の規制改革推進会議で議論されていると介護系のメディアは報じていましたが、いよいよ現実性を帯びてきたのかも知れません。
推進会議では大手の介護企業が夜間の見守りセンサーなど新技術の活用で介護付き老人ホーム職員の業務を減らし、「 4人に 1人」で対応可能との報告をしました。そこで厚生労働省は 4月から各種のセンサー、介護ロボット、補助的な作業をする介護助手を活用する実証事業でこれを確認する計画を立てました。できれば2024年度の介護報酬の改定時に老人ホームから基準緩和したい考えです。
おいおい正気かね、と驚きます。私はごく一部の施設しか見ていませんが、どこも介護職員不足で、職員も入居者もかわいそうです。ロボットは手助けになるとしても介護はやはり人が基本です。会議では特別養護老人ホームなどが加わる全国老人福祉施設協議会も施設の規模、必要な介護の程度のいろいろで、現状では緩和は困難と見ています。実際、「 3人に 1人」のはずの施設の多くが職員を増やして「 2人に 1人」に近い基準で運営しています。日本の施設で寝たきりが多いのは介護力の不足が原因です。職員はむしろ「 2人に 1人」の配置に増やすべきでしょう。
介護職員全体の不足を基準緩和でごまかしたい政府の意図は分かるものの、入居者のための介護でなければなりません。若い人が働きたい職場作り、アジアからの移民受入れ、症状改善での業務減らし、自宅介護の充実など本質的な対策が必要です。政治家や官僚は他のことに予算を回したいのでしょうが、国民の多くは介護関連費の増加を受け入れてくれるはずです。