田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(416)介護施設利用料が大幅値上げに
特別養護老人ホームなどの介護保険施設入居者の利用料が 8月分から大幅に上がりました。介護保険には負担限度額認定制度というのがあります。住民税非課税世帯を対象に、国は食費や居住費を補助する制度ですが、今回、本人や家族の収入、預貯金額で補助額を変えることにしたのです。その額が予想外に大きいのに驚きました。
解説記事( 8月15日付け『朝日新聞』) によると、これまでは有価証券などを含む預貯金額は本人が1000万円以下、同居または別居の配偶者と合わせても2000万円以下なら補助の対象でした。しかし、 8月からは本人の収入で 3段階に変わり、預貯金額は配偶者と合わせて1650万円から1500万円までの人が対象と狭まりました。
その結果、現在の約 100万人のうち、約27万人が出費増になると厚生労働省は見ています。居住費は個室か、多床室かなどで差があります。もし、対象外となって補助が全くなくなると最大で月約 6万8000円の出費増になりますが、 3万円から 4万円ぐらいの人が多いようです。
介護保険の費用は保険料と公費 (国や自治体負担) が半分ずつ、つまり各50%負担でまかなわれています。高齢化で出費が増えるのはやむを得ないと思いますが、公費負担を増やしたくない厚労省は少しずつ内容を切り下げています。
もともとは無料だった食費や居住費が2005年に自己負担になり、同時に緩和策としての補助制度も始まりました。今回は預貯金額という分かりにくい条件の変更で補助額を減らしました。預貯金を数百万円減らせということなのでしょう。
新型コロナで不安の強い時期、月に数万円近くも負担が増えるのは厳しいことです。収入源や失職が増えています。親の収入に頼っている子どもたちにも痛撃です。
一方、介護保険料はどんどん上がっています。受益者の大半が65歳以上なのに保険料は40歳以上に義務づけられています。これを30歳とかに引き下げようとの動きもあります。
介護保険なんか使わないつもりの私も年に11万円払っています。医療保険と違い、介護保険は75歳以上でも 3割しか利用していないと聞くと考えてしまいます。
介護費用の不足が介護労働の不人気を招いています。公費負担を増やせば介護の質は向上し、国民も安心できると思うのに、厚労省は逆に向かっているみたいです。