医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2021年8月24日

(415)誰が支持してる外国人軽視策?

 名古屋の入管施設で亡くなったスリランカ女性の関連ニュースを見ると、いろんなことを考えてしまいます。「しのぶ会」が開かれた 5月にも書いたことですが、日本政府の外国人軽視、移民拒否の政策や空気は理解しがたいものがあります。それは閣僚や官僚の意思なのか、自民党や公明党の議員は本当に賛成なのか、知りたいものです。
 英語講師をめざしていた33歳の女性は、在留資格を失ったとして昨年 8月に収容されていましたが、体調不良で衰弱し、今年 3月 6日に亡くなりました。適切な対応や診療がなかったのは明らかですが、状況が少しずつ分かってきました。
 8月10日には出入国在留管理庁の調査報告書が公表されました。それによると、 2月中旬の尿検査で栄養不足や腎機能障害が疑われたものの、精密検査は行われませんでした。
 2月下旬には本人が外部病院の受診を求めたのに職員は無視し、上司にも知らせませんでした。施設には常勤医はおらず、休日の医療体制も不備でした。
 本人だけでなく、状況を知った支援団体も、入院や点滴を求めていました。女性は外部の医師の検査や診察を受けていましたが、その医師の記録には「薬の内服ができないなら入院、点滴」「仮釈放してあげれば良くなると期待できる。患者のためにはそれが一番いい」と書いてあったそうです。訴えがインチキと思ったのか、面倒だったからか、いじめなのか、職員は女性を苦しい状態のまま放置して死なせたわけです。
 それにしても不思議なのは、民間施設でこうした被害者が出ると普通は刑事責任が問われるのに、行政の場では不問で、上司の戒告や訓告ですまされることです。
 8月12日、同庁は収容中の女性の監視カメラのビデオ映像を来日した妹 2人だけに見せました。死亡するまでの約 2週間分を 2時間に編集したものです。ベッドから落ちて動けず、「助けて」「寒い」と訴える女性に職員は「自力でやりなさい」と、毛布をかけただけで床に寝かせたまま出て行った場面などに妹は衝撃を受けたといいます。弁護士にも見せないことや編集が妥当かどうかに疑問が出るのも当然でしょう。
 在留資格を失ったものの故国に戻にたくない人を長期間収容する制度そのものにも疑問を感じます。難民を世界一認めない国策も誰が支持しているのでしょうか。

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