田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(396)細か過ぎる診療費支払い基準をゆるめる
新型コロナで割りを食っている医療機関の話を前々回に取り上げました。厚生労働省関係者も参加している勉強会だったからか、あるいは常識だったからか、話題に出ませんでしたが、背景には国の細か過ぎる診療報酬支払い制度があるようです。
全国保険医団体連合会 (保団連=住江憲勇会長) は 3月 5日付けで、田村厚労大臣に医療費支払いに関する緊急要請書を届けました。保団連は 1、 2月に全国の病院を調査、回答した2050病院の 4割、844 病院がコロナのために医療費の支払い条件である施設基準を満たせない状況になっていることが分かったとして国の対応を求めたのです。
代表的な基準が看護職員の配置基準です。急性期患者を扱う一般病院は患者に対して看護職員数が一番多い「 7対 1」から「10対 1」「13対 1」…の順に請求できる入院基本料額が下がっていきます。新型コロナ感染者を受け入れたために看護師が何人も辞めたり、感染防止のため休ませたりすると看護ランクが下がります。
急性期を前提とした「 7対 1」は、患者の平均入院期間が18日以内であることも条件です。高齢のコロナ感染者が長期入院すればランク落ちする可能性も出てきます。また、看護職員の労働条件保護の目的から月平均夜勤時間は72時間以内とされ、コロナ感染者のため作業量が大幅に増えた場合が問題です。入院基本料が減額になります。
施設基準を満たせなくなった原因は・看護職員などスタッフの確保困難・入院患者の減少・外来患者の減少、といった順で、これらが看護職員の配置基準、月平均夜勤時間の基準へと影響しました。
20年ほど前から、診療報酬額の改定毎に人員や設備などの条件、施設基準がどんどん付くようになりました。一部の病院にしか認めないことで医療費の増加を抑えようとしたのでしょう。おかげで医療費は非常に複雑で分かりにくくなっています。
保団連はコロナ収束までは基準は従来通りとする扱い、さらには診療報酬の増額などを求めています。この際、施設基準を抜本的に整理し、欧米並のゆとりある病院経営にしたらどうでしょうか。利益を経営陣が取るのではなく、設備の充実や貧しい患者の窓口負担減額などに還元するとの新基準を導入すればいいと思うのですが。