田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(352)美容外科手術を安全に受けるには
外出自粛の生活の一番の楽しみは読書。新型コロナウイルスのことを束の間、忘れさせてくれます。取材でお世話になった先生方は結構のご高齢が多いのですが、今でも時々、新刊本をいただきます。文筆業といいながら何年も新刊を出せない我が身と比べ、「偉いなあ」と文句なく敬服です。
なかでも、総合東京病院形成外科美容外科センター長・保阪善昭先生の『美容外科手術受ける前に絶対読む本』(法研)には驚きました。手術を希望する人の知りたいことを詳しく、分かりやすく書かれた親切な本で、出色のできだと思います。
日本では脱毛、皮膚若返り、ボツリヌス毒素によるしわ取り、まぶた形成手術、イボ・シミ治療など年間160万件の美容医療が行われています。脱毛や肌の手入れをするエステと美容外科の違いも世間ではあまり理解されていません。エステシャンは公的な資格がなく、質はさまざまで、衛生上の問題施設もあります。医師がいないエステで使える器具では永久脱毛はできないそうです。
美容外科は本来は形成外科の分野ですが、実は日本では医師ならだれでも美容外科医と名乗れ、開業できます。このため内科や麻酔科などから転じた美容外科医もいます。何と「日本美容外科学会」は形成外科医だけの学会と、そうでない医師の学会の2つが併存しています。健康被害を受けた患者が学会窓口に相談したら当のクリニックに筒抜けになっていたことが昨年ニュースになりましたが、これは後者の学会でした。クリニックの下調べから予約時のカウンセリングで聞くべきことなど、受診する場合の留意点もまとまっています。
美容外科の治療は具体的に何をするのか、分からないと怖い感じです。二重まぶた、目を大きくする、おへそ、巻き爪などさまざまな治療法の詳しい絵入り解説に納得。続いて最後は、トラブルの解決策が書かれています。
保阪先生の東京総合病院。新型コロナの院内感染でいまは外来診療が止まっています。1日も早い再開を願っています。