医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2013年6月17日

(16)乳がん予防手術の効果

  乳がんになりやすい遺伝子を持つという米国の女優アンジェリーナ・ジョリーさん(37)が予防的な乳がん切除手術を受けたと公表し、大きな話題になっています。また、日本でもそうした手術を行う用意があるとの病院も出ています。
 2013年5月14日の『ニューヨーク・タイムズ』紙への寄稿によると、彼女の母親も約10年の闘病の末、56歳で亡くなったとのことです。彼女も乳がんと卵巣がんになりやすい遺伝子を受け継いでおり、医師の診断では乳がんになる率は87%もあったのですが、思い切って予防手術を受けた結果、確率は5%に減ったといいます。子どもたちと一緒にいる期間を長くしたいがための選択でした。
 おそらくはBRCA-1、BRCA-2と呼ばれる遺伝子の変異です。米国では20年以上も前から予防手術が行われており、『朝日新聞』でも何度か書かれた記憶があります。著名な女優の選択、ということで今回はインパクトがありました。
 6月12日に緩和ケアに関する研究会があり、慶応義塾大学医学部の近藤誠講師が「がん放置療法」について講演しました。医師がいう「がん」には、他の臓器に転移する能力のない「がんもどき」と、転移して命にかかわる本物の「がん」があるとの話です。講演の後でジョリーさんの手術の質問が出ました。
 近藤さんの感想は「あまり意味がない手術」でした。遺伝性の乳がんでも「がんもどき」があること、もし、本物の「がん」であれば、ジョリーさんの年齢ではすでに他の臓器に転移ずみの可能性が高いこと、予防的な切除手術をするなら10代の方がずっと効果が高かったはず、といった理由からでした。近藤さんは87%という数字に首をかしげ「本当は60%程度ではないか」とも話していました。
 ニュースを理解するには、いろんな観点からの分析が必要だと思います。私にとって近藤さんの見方はとても新鮮でした。

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