田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(322)楽しく食べる、が大事ですね
勉強にいい季節、とあって催しが毎週あります。9月17日には渥美和彦記念財団が主催する健康や長寿をテーマとする公開シンポジウムが東京大学医学部であり、著名な先生方の講演に感動させられました。
中村丁次・日本栄養士会会長は高齢者は食事が十分でないために、低エネルギー、低たんぱく、低アルブミン血症が起きやすく、低栄養は精神的変化をもたらすと強調されました。やる気がなくなってきます。胃を全摘した私もまさにその通りの状態が続きました。快適な生活のためには何よりも栄養が大切であり、そのためには食べたいもの、美味しいものを楽しく食べることが重要だとの指摘に納得です。辻哲夫・東京大学特任教授も筋肉のフレール(虚弱)予防のために食が大事で、やはり「美味しいから」「楽しいから」を強調されました。時々、喉が痛むため、ついつい不機嫌になりながら食事してしまうのを思い出して、「反省!」です。
ちょっと驚いたのは落谷孝広・日本医大教授のマイクロRNAの話です。血液に含まれる低分子のリボ核酸のことで、何年か前に「血液1滴でがんが分かる」と報道されましたが、いまや13種類のがんが90%以上の精度で分かるそうです。それだけでなく、再発や転移のもとになる脳や骨髄に潜むがん細胞や、脳卒中が起きる前段階などもマイクロRNAで分かりつつあるとの話でした。落谷先生が昨年までいらした国立がん研究センターを中心とした国家的プロジェクトのような研究が実るのはすばらしいことです。高齢者にとってがんや脳卒中の予防や治療はとても重要ですから。
財団会長の渥美先生は91歳目前でしたが、車イスながらずっとシンポジウムをお聞きでしたし、最後に挨拶もされました。東大で人工心臓を山羊に植え込み、実験をされていた時に取材してから40年も経ちます。