医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2019年8月19日

(317)食品添加物の不使用表示のこと


 お盆の休暇で「第2の故郷」とも言うべき奈良に帰っていました。途中、台風10号で雨も2日ほどありましたが、残りはクラクラするような猛暑の日々でした。
 ずいぶん前の感じになりましたが、6月8日は「食の安全・安心財団」主催のメディア情報懇談会「無添加表示は、どうして問題なのか」が開かれました。医学医療担当の前、新聞の家庭面時代は食品添加物の取材が多かったことを思い出します。
中心は女性消費生活コンサルタントの森田満樹さんの講演でした。森田さんによると、いろんな食品で食品添加物の「無添加・不使用」の表示が増えています。15歳以上の男女を対象とした消費者庁の調査では、半数の人は表示を重視して購入していました。その理由として7割が「安全で健康によさそうだから」と答えています。「化学調味料」「合成保存料」「添加」などは悪いイメージを抱かせ、「無添加」「不使用」「天然・自然」「ナチュラル」などの表示のある食品に手が伸びます。
 その結果、「無添加・不使用」の表示は増えますが、ルールがあいまいなため、いい加減な表示も増えているそうです。買い物をあまりしない私は実感していませんでしたが、無添加が当たり前の冷凍食品やレトルト食品にわざわざ「保存料無添加」とあったり、別目的の添加物を使いながら使っていない○○を「○○無添加」、同じ成分を含む代替材料を使いながら「無添加」などとの表示もあるようです。このままでは消費者の「優良な食品」「安全な食品」への誤解がひどくなり、事業者だけでなく消費者の首を締めることになるとして、森田さんは表示のルールを厳しくすべきと訴えました。
 私も保存料は食中毒予防効果も高いし、使用量も安全範囲内の微量なので食品添加物をことさら危険視することはないと思います。しかし、輸入製品で見つかる違法添加物や農薬、日本でも近年起きている食品偽装事件などから事業者を100%信頼することはできません。消費者や事業者が集まる検討会では誤解を減らすためのルールを話し合うようですが、食品の安全をさらに高める議論もしてほしいものです。

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