田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(315)AI時代、大丈夫かなあ
AI(人工知能)についての新聞や雑誌の記事が目につきます。チェスや囲碁や将棋などの勝負で人間がなかなか勝てなくなってから久しくなりますが、人間の仕事の多くがAIに代わるのは間違いないようです。面倒な作業がなくなればいいとは思いつつも、「今の職業の半分はなくなる」と聞くと迷ってしまいます。
私が参加している勉強会で先日、専門家を招いた勉強会がありました。AIは1960年代から本格化し、2度もブームと冬の時代を経て今が第3次のブーム最中。大量のデータを処理して学習、精度が高まり、需要を拡大しています。得意な画像処理では顔認識が飛躍的に正確になり、入国管理、手配者の発見、などは実用化寸前です。医療分野でも画像診断は高速でしかもすでに専門医レベルに到達したと話題です。
「職業半減」は2015年12月、野村総合研究所の発表でした。601業種がAIやロボットに替わる確率を計算、可能性の高い100種、低い100種を示したものです。各種の工員や作業員、配達員、警備員、電車・タクシーの運転手、一般事務員などが前者で、医師や行政、教員、芸術家、カウンセラーや学校、医療などの事務員は後者です。人と接する、多彩な内容の職業は残りそう、というわけです。
AIの発展の予測によってはもっと深刻です。ウイルス学の中原英臣先生らは雑誌のコラム (『ニューリーダ』6月号) で、画像診断や検査など医療技術分野にはすでにコンピューターが浸透し、医師は患者に結果を伝える代理人としてAIと共存していると指摘、AIを使いこなせる医師、話し上手でない医師は次第に必要とされなくなる、と警告を発しています。
それで大丈夫かとの疑問もわきます。自動運転で事故がゼロになればいいのですが、万一の事故時、駅員ゼロで乗客は対応できるのか、物の配送は不要になるのか、です。高血圧や高脂血症と診断、自動的に薬を処方するAIと同じことしかできない医師はたしかに要らないとしても、外からの指示がない限り、新知見を踏まえて数値を変えることはできません。いや、AI全盛になれば、優秀なはずの医師もあえて新知見を出そうとは思わなくなるかも知れませんよね。