田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(284)医学部入試、この機会に大改革を
文部科学省局長の汚職事件に端を発した私立大学医学部の不正合格が複雑な発展をしています。東京医大は文科省の私立大学研究補助事業で助成金を受けました。ただし、局長は決定権者ではなく、うまく選ばれるように助言・指導した程度ですが、見返りに息子を同大に入学させてもらいました。
入試の1次試験の点数に一定の点数を加点してもらうやり方ですが、調査が進むといろんなことがわかってきました。東京医大は特定の受験生の加点以外にも、2006年からは受験生のうち現役男子、1、2浪男子に一律に加点し、結果的に女子や3浪以上の浪人受験生の合格者が減るようにしていました。
「女性差別」の観点から文科省は、最近6年間の大学医学部の男女別合格率を調べました。それによると男子合格率は女子の1.2倍で、順天堂大学の1.67倍が最高。1.29倍の東京医大は15位で、九州大など国立6校が東京医大を上回っていました。
年により違いがあるようですが、東京医大の18年度の加点が公表されています。1次試験は個別に加点して救済しますが、興味深いのが2次試験の論文です。得点を 0.8倍した点数に現役から2浪までの男子には10点、3浪男子には5点を加えます。加点のない女性は本来なら 113人合格すべきところ69人にとどまっていました。
もともとインチキなのに男子加点が公平なのは不思議な気もします。結婚や出産で離職する女性を敬遠するのもわかりますが、裏工作は卑怯です。公表して男女別定員制ならば「東京医大出の女性は優秀」となり得ます。
昭和大が現役・1浪受験生と同窓生親族を優遇していたと公表するなど事件は他大学へも波及中です。神戸大は医師不足地域出身者を、金沢医大は同窓生の子どもや北陸3県の卒業生などを優遇、などなどです。
これらの大学は平謝りですが、試験点数の公平さが最善かどうかは疑問もあります。とくに国立大医学部は、いまの記憶力重視の試験でいい成績の名門校・名門塾の卒業生が増えています。一方、米国では最終的には面接で医師の適格性を見るといいます。
男性でも女性でも何浪でも高齢でも、試験点数が多少悪くてもいい。患者のために働きたいと考えているような人を選べる入試、が理想です。