田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(251)都道府県で医療費が違ってもいい?
診療報酬は全国均一でなく都道府県で多少は差があってもいいのではないか、と思っていた時期があります。4月10日の『東京新聞』夕刊に、財務省の社会保障改革案の1つに挙がっているとの記事を見て思い出しました。公定価格といっても鉄道やタクシー料金は地域差があります。診療報酬には医師や看護師など職員の給与も含まれていますが、東京と地方には厳然と給与格差があります。地方の病院グループが東京周辺の病院を譲渡されて進出するのも人件費分の余裕の反映で、不公平な感じがしたからです。
財務省案は厚生労働省や知事が特例で一部の診療単価を下げる制度です。国民健康保険(国保)料高騰を抑えるため、とは言いながら、結局は国の財政支出の削減でしょう。
たしかに国保料を抑えることは重要です。インターネットで見ると、年収400万円の単身者の場合、最高の広島市が63万余円、2位神戸市が59万余円。万一の医療への備えとすると月5万円は大きすぎます。安い1、2位は29万余円の富士市、豊田市でした。
今は2倍の国保料格差ですが、かつては6倍もありました。保険での医療提供は全国一律ですから、同じ品が1000円で買える町も6000円もする町もあるようなものです。報道されてからでも25年経ちます。高額の市町村住民がよく文句を言わないものだと感心しました。
県によって医療内容も結構違います。人口10万人当たりの病院ベッド数は高知県が2520床で810床の神奈川県の3倍、1人当たり国民医療費では高知県の44万円は埼玉県29万円の1.5倍でした。神奈川県は下から3番目で30万円。一方、平均寿命は各都道府県とも80余年で、格差はせいぜい3年、4%弱ですから、病院を多く作り、多額の医療費をかけても、ほとんど役立っていないことになります。
診療報酬の特例制度とは、たとえば病院ベッド数の多い県では入院基本料などを安くし、病院がベッド数を減らしたくなるよう仕向けるということでしょう。アイデアとしては分かりますが、さて効果はどうでしょうか。仮に医師会を説得できても、先祖代々の広大な敷地を持つ地方の病院は財務省の思惑通りにならないかも知れません。