田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(223)医療費が14年ぶり減、とか
厚生労働省は9月15日、2016年度の「概算医療費」を発表しました。41兆3000億円は15年度より2000億円の減。高齢者の増加で医療費は年々増えるのが当たり前、との流れのなかで、減少は02年度以来14年ぶりの「快挙」ということです。
概算医療費は保険医療費のことで、保険と公費、患者の自己負担分の合計です。これに自費診療医療費、労災保険分などを加えた国民医療費より1年早く数値が出るため、速報値として利用されています。15年度は14年度より1兆5000億円増えたのですが、これは高額薬価のC型肝炎薬の保険導入などが主因で、薬価の引き下げで16年度は一息ついたことが医療費減になったと考えられています。
ところで来年度は、医療費の公定価格である診療報酬の改定があります。診療報酬を巡っては、日本医師会などの医療側と、厚労省や保険機関などの支払い側の綱引きが展開されますが、9月21日は医師、歯科医師10万人で構成する全国保険医団体連合会 (保団連)が記者会見し、2002年以降の国の医療費抑制策、その結果としての患者負担増からの受診抑制で医療機関の経営が悪化しており、医療崩壊をくい止めるためには10%以上の診療報酬引き上げが必要と訴えました。
保団連によると、C型肝炎薬など超高額薬の登場で、外来医療費の増加の3分の2は薬剤費が占めています。抗がん剤オプジーボの日本の価格が英国の5倍と高いことを最初に指摘したのが保団連でした。
不明朗、不合理な新薬の算定方式に対し、初診料や再診料は20年間もほとんど変わらないなど、医療機関の診療報酬は低く設定されています。入院基本料、各種技術料なども感染防止対策などの設備や人件費で赤字が増えていると保団連は指摘しています。
問題はその財源ですが、保団連は、国庫負担や企業負担をドイツ、フランスなど欧州各国並みに増やし、高額所得者の保険負担を増やすことを提言しています。
国は近年、国庫負担や大企業の負担を増やそうとせず、医療機関に負担を押しつけてきました。それが限界にきているのはたしかです。私は国はもっと医療機関の要求に耳を傾けるべきだと思っています。